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各種有機化合物の微量分析(誘導体化法及び測定方法)
ppm〜ppbレベルの微量有機化合物を定量する場合、目的化合物を誘導体化して分析装置の検出器に対する感度を高くして定量します。その際に用いる誘導体化法と測定方法例を紹介します。
No. | 対象化合物 | 説明 | 誘導体化法 | 測定方法 | 定量下限 |
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1 | 有機スズ化合物 | 有機スズ化合物はポリマーの重合触媒、塩化ビニルの安定剤、船底の塗料、防カビ剤等に広く使用されていますが、その一部は環境ホルモン様物質として規制されています。特にグリーン調達等、化学物質の規制強化に伴いトリブチルスズ(TBT)やトリフェニルスズ(TPT)の含有量の把握が必要です。 | アルキル化 | GC/MS(SIM)法 | 数ppb |
2 | アルデヒド類 | ホルムアルデヒドやアセトアルデヒドはシックハウスやグリーン調達等の規制対象化合物です。また、プロピオンアルデヒドやブチルアルデヒド等の低級脂肪族アルデヒドも悪臭物質として規制されており、これらの化合物の量を把握することが必要です。 | UVラベル化 ヒドラゾン |
HPLC法 GC/MS(SIM)法 |
数ppb |
3 | アミン類 | 脂肪族アミンの分析はGCで行われることが多いですが、沸点の低いアミン類は、保持時間やカラムへの吸着等の問題によりppmレベル以下の分析は困難です。このような場合は、UVラベル化-HPLC法やTMS化-GC/MS(SIM)法で高感度に測定することができます。 | UVラベル化 TMS化 |
HPLC法 GC/MS(SIM)法 |
10ppb |
4 | カルボン酸 | カルボン酸類の分析はGCで行われることが多いのですが、そのままの形ではカルボキシル基の影響でピーク形状が悪く、定量性に問題があります。微量分析の場合には、エステル化してGC/MSのSIM(選択的イオンモニタリング)法により、高感度に測定できます。 | エステル化 | GC/MS(SIM)法 | 数10ppb |
5 | アルコール、 フェノール類 |
環境ホルモンとして知られているビスフェノールAなどのフェノール類やアルコール類を高感度に分析するには、シリル化剤でトリメチルシリル化しGC/MS(SIM)で定量します。 | シリル化 | GC/MS(SIM)法 | 10ppb |
6 | ヒドラジン | ヒドラジンはゴムやプラスチックの発泡剤、水処理剤、医薬品や農薬等の合成原料として使用されています。そのままの形で検出することは困難ですが、シッフ塩基に誘導体化するとGC/MS(SIM)で高感度に分析できます。 | シッフ塩基 | GC/MS(SIM)法 | 数100ppb |
7 | イソシアネート | ウレタンプレポリマー中に残存するMDIやTDIなどのイソシアネートをGCで分析すると、プレポリマーの一部が気化室で分解してイソシアネートが発生するため、正しい値が得られません。この場合は、アミンと反応させて安定なウレイド誘導体に変換し、HPLCで測定することにより正しい結果が得られます。 | ウレイド化 | HPLC法 | 100ppb |
8 | シラノール | ガラス基板上やシリカ粒子に残存するシラノールを評価することで、親水性や疎水性の情報を得ることができます。残存シラノールをブロモシラン化しTOF-SIMSやESCAで相対的に評価するする方法を確立しています。 | ブロモシラン化 | TOF-SIMS | 規格化2次イオン検出強度で評価 |