S542
画像解析によるSPM弾性率像への形状の影響の対策
走査型プローブ顕微鏡(SPM)は多くの物性をマッピングできる優れた特徴がある反面、面粗さの値が大きい測定面上では形状の影響により定量精度が悪化することが知られています。
そこで、面粗さの値が大きい試料表面のSPM弾性率像に画像解析(後処理)を行うことによって、対策を行った例を図に示します。粗い(算術平均面粗さSa > 100nm)ポリスチレン(PS)試料の形状像および弾性率像を測定しました。均質なPSにも関わらず、弾性率像には形状の影響によるコントラストが認められ、弾性率分布は平滑試料(Sa < 1nm)に対して低弾性率側にシフトしています。次に、形状の影響を後処理によって除きました。その結果、弾性率分布(解析後)は高弾性率側にシフトし、平均弾性率値は平滑試料へと近づきました。本手法によって、従来は評価困難だった面粗さが大きな実試料表面についても試料本来の情報を取り出すことで形状の影響を低減し、物性値の定量精度が改善できると考えます。これにより、機能性薄膜の評価に貢献できると考えます。
図:粗いPS試料の形状像、弾性率像および解析前後の弾性率分布