S541
走査型プローブ顕微鏡(SPM)によるゴムの劣化分析
ゴム材料は機械特性の向上や長寿命化のため、多数の添加成分を含む複合材です。例えば、カーボンブラックなどの微細なフィラー(充填剤)は強度や耐摩耗性を増す目的で配合されます。これらの添加成分はナノスケールのサイズであるため、フィラー間のゴム成分に注目した劣化分析を行うには走査型プローブ顕微鏡(SPM)による高空間分解能な試料断面の機械特性測定が有用です。
劣化前後のタイヤゴムの弾性率像および吸着力像を図に示します。吸着力の高い箇所(白〜紫)はゴムで、低い箇所(黒〜青)はフィラーのカーボンです。弾性率像から、弾性率の高い箇所はフィラーのカーボンもしくはカーボン周辺の硬いゴム(バウンドラバー*1 )と推察されます。劣化によりゴムの弾性率は増加し、吸着力は減少することが分かります。
このように、SPMは微小領域の弾性率変化を検出できる手法であり、ゴムだけでなく高分子複合材料全般に対して特定成分の劣化情報を得るのに有用な手法です。
図:劣化前後のタイヤ断面の弾性率像および吸着力像
*1 参考文献:植田英順、中嶋健、日本ゴム協会誌、2018、第91巻、第10号、p.383-387.