顕微透過反射法によるIRイメージング測定
赤外分光分析(IR)は、有機物の代表的な分析法のひとつとして、古くから広く用いられており、サンプルの状態や目的に応じて、様々な測定法があります。技術資料「IR測定法(顕微透過反射法)」にて、顕微透過反射法について紹介しました。続いて今回は、顕微透過反射法を用いたIRイメージング測定について紹介します。
顕微透過反射法を用いたIRイメージング測定においては、一回の測定で約350μm角の範囲を測定することが出来ます。この約350μm角は4096分割されており、その分割された各領域の吸収強度を抽出することにより、任意の波数にて色温度表示(IRイメージ化)することが出来ます。また、隣接する測定範囲を連続して測定することができ、得られた各IRイメージをつなぎ合わせることにより、より広範囲のIRイメージを構築することが出来ます(例えば、数 mm角)。図1に概念図を示します。このように、目的成分に特徴的な波数を用いたIRイメージを作成することにより、その成分の分布状態を可視化することが出来ます。
図1:顕微透過反射法によるIRイメージング(つなぎ合わせ)の概念図
一例として、ハンドクリームを塗った指で触った金ミラーについて、顕微透過反射法によるIRイメージング測定を行った事例を紹介します(図2)。複数のIRイメージをつなぎ合わせることにより、約4mm ✕ 約2mmの範囲のIRイメージを作成することが出来ており、ハンドクリームによる指紋を確認することが出来ています。
図2:ハンドクリームを塗った指で触った金ミラーのIRイメージ
顕微透過反射法によるIRイメージング測定は、試料の厚み(目安として10μm未満が好ましい)や基板(赤外光を反射すること)等の一定の条件が必要にはなりますが、数十μm〜数mmの領域において、有機物の分布が評価出来る手法として、様々な活用が期待されます。