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M242

無染色によるポリマーアロイの相分離構造観察

高分子材料はC、H、N、Oなどの軽元素が主体であり、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察した場合、電子線透過能の差が小さく、像コントラストが低い傾向にあります。そのため、一般的な形態観察では、重金属を用いて特定の官能基などを染色し、電子線透過能を下げることで像コントラストを高くします。しかし、染色は万能ではなく、材料によっては像コントラスト付与が困難な場合もあります。そこで、この場合に有効な選択肢を確立すべく、ポリマーアロイに対し複数手法を組み合わせた無染色観察を試みました。
ポリマーアロイ EPDM/PP/PA(ethylene propylene diene monomer rubber / polypropylene / polyamide) の走査型透過電子顕微鏡(STEM)像を図(a)に示します。染色コントラスト(技術資料「ポリマーアロイの相分離構造観察 SEM,TEM,SPMの選択」、「ポリアミドを含む多成分系樹脂のTEM観察」参照)には及ばないですが、一定の像コントラストが得られ、3相の相分離構造が観察できます。さらに、同視野のEELS化学状態マップを図(b)に示し、EDS元素マップを図(c)に示します。ここで、前者ではC=C結合の1s → π*吸収強度を示しています(技術資料「Electron Energy Loss Spectroscopy(EELS)スペクトル解析」参照)。C=C結合はEPDMに特有な化学状態であり、N、OはPAに特有な元素であることから、各相は図に示すように帰属できます。
以上より、染色による像コントラスト付与が困難な場合でも、無染色観察は有効な選択肢として期待できます。

無染色ポリマーアロイ(EPDM / PP / PA) の (a) STEM像 (明視野像, 暗視野像) ,(b) EELS化学状態マップ (C=C結合), (c) EDS元素マップ (C, N, O), スケールバーは1マイクロメートル相当

図:無染色ポリマーアロイ(EPDM/PP/PA)の(a)STEM像(明視野像、暗視野像)、(b)EELS化学状態マップ(C=C結合)、(c)EDS元素マップ(C、N、O)、スケールバーは1µm相当

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