X185
密度相関関数によるラメラ厚の推定
結晶性ポリマーは、分子鎖が折りたたまれる高次のラメラ構造をとって特有な物性を有している。この物性と構造の関係を把握するため、SAXS測定の長周期散乱からラメラ間距離を算出し、非晶質領域を評価することは一般的な手法である。一方、結晶性領域であるラメラの厚みを評価するためには、他の手法によってポリマーの密度を求め、上記非晶質領域から推測するという間接的な手法が使われている。そこで、結晶性ポリマーのSAXS散乱には、結晶と非晶質領域の繰り返しによる電子密度揺らぎの情報が含まれていることを利用し、フーリエ変換による密度相関関数を導出して、ラメラ厚を直接抽出することを試みた。*1
ある結晶性ポリマーのSAXS散乱プロファイルを図1に示す。長周期散乱より、ラメラ間の距離は22nmと推測された。次に、この散乱プロファイルのフーリエ変換から得られた密度相関関数を図2に示す。Stroblの解析手法により、ラメラ間距離は24nm、ラメラ厚は8.3nmと抽出された。
図1:長周期乱解析
図2:密度相関関数解析
*1:G.R.Strobl, The physics of Polymers. Chapter 4.