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蛍光X線ファンダメンタルパラメータ法による定量分析
蛍光X線のエネルギーは元素に固有であり、その強度は試料中の元素含有量に関係している。そのため、標準試料を用いて蛍光X線強度と元素含有量の関係を求めておくことによって、定量分析を行うことができる(検量線法)。ただし、共存元素による吸収・励起効果などの影響が複雑であるため、標準試料の組成は、未知試料の組成と近いことが必須である。しかしながら、実際にそのような標準試料を用意するのは難しく、相当な労力を要する。
そこで、この問題を解決するために考案された方法が、ファンダメンタル・パラメータ法(Fundamental Parameter法、FP法)である。このFP法は、構成元素の種類と量から、理論的に蛍光X線強度が計算できることを利用して、実測の蛍光X線強度に一致するように組成を推定する方法である。
図:装置概観
弊社で使用しているFP法プログラムSQXは、共存元素の影響だけでなく、試料の性状や装置定数等も理論的に考慮し、30分程度でホウ素からウランまで(試料の形態によってはフッ素からウランまで)の元素を測定・定量することが可能である。
ステンレス鋼と合金鋼について、FP法による定量分析を行った結果を下表に示す。
装置 : Rigaku製 ZSX Primus 蛍光X線分析装置
C | Si | Mn | P | S | Cu | Ni | Cr | Mo | |
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標準値 | 0.055 | 0.66 | 0.37 | 0.023 | 0.005 | 0.080 | 0.24 | 16.45 | 0.011 |
FP法 | N.D. | 0.61 | 0.35 | 0.021 | 0.014 | 0.083 | 0.21 | 17.46 | 0.012 |
C | Si | Mn | P | S | Cu | Ni | Cr | Mo | V | |
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標準値 | 0.24 | 0.23 | 0.77 | 0.049 | 0.018 | 0.13 | 1.06 | 1.10 | 1.26 | 0.22 |
FP法 | N.D. | 0.25 | 0.85 | 0.043 | N.D. | 0.12 | 0.97 | 1.17 | 1.39 | 0.23 |