S533
包装容器基材の形態、結晶性および機械特性評価
走査電子顕微鏡(SEM)、透過電子顕微鏡(TEM)、走査型プローブ顕微鏡(SPM)、レーザーラマン分光装置を用いて、包装容器基材(PE)の断面形状、結晶性、硬さを評価しました。
試料の断面SEM像(図1)より、二層フィルムとして観察されており、上側をPE1層(厚さ11µm程度)、下側をPE2層(厚さ27µm程度)とします。図中赤枠相当の二層界面の暗視野STEM像(図2)において、観察されるラメラの密度を画像処理を用いて可視化すると、PE1層の方がPE2層よりラメラ密度が高いと考えられます。これは、ラマンスペクトル(図3)において、1060cm-1のPE結晶性ピークを基準とし、PE非晶質に相当する1080cm-1ピーク面積を比較した場合に、PE2層の方が非晶質領域が多いことに整合します。また、SPMによる弾性率像(図4)はPE1層の方がより高い弾性率を示しており、得られた平均弾性率値はそれぞれ一般的なHDPEとLDPEの引張弾性率に相当することが分かりました。以上の分析より、試料はHDPEとLDPEから構成される二層フィルムと推定されました。このような異なるスケールでの多面的な評価の組み合わせは、微細な構造解析に有効であると考えられます。
図1:断面SEM像 | 図2:(a)断面STEM像、(b)ラメラ密度マップ |
図3:ラマンスペクトル比較 | 図4:SPM弾性率像と平均弾性率 |