S529
小角X線散乱によるベシクル構造の動径分布解析
試料が希薄な場合、散乱強度は各粒子からの散乱強度の和として表されるが、粒子の濃度が高い場合や凝集している場合など、粒子間の干渉効果が無視できないとき、散乱強度I(q)は粒子の形状に起因する形状因子(Form Factor)F(q)と、粒子の配置に起因する構造因子(Structure Factor)S(q)とに分けて考えることになる。さらに、粒子が単分散で等方的であると仮定すると、I(q)はF(q)とS(q)の積に比例することが知られている*1。
I(q)∝ F(q)S(q)
このS(q)は動径分布関数g(r)とフーリエ変換の関係にあり*2、S(q)を抽出・変換すると、g(r)の様相から試料の構造を評価することが可能となる。
市販洗剤で実験したSAXS散乱強度を図1に示す。長周期散乱からベシクルの大きさは5nm程度と推察された。
図1:洗剤のSAXS散乱強度
次に散乱強度のS(q)をフーリエ変換して得られる動径分布関数g(r)を図2に示す。水混入によりベシクル構造とその構造相関に生じた変化を捉えている。
図2:洗剤の動径分布関数
- *1 雨宮慶幸、篠原佑也、日本放射光学会誌、19、338(2006)
- *2 松岡秀樹、日本結晶学会誌、41、213(1999)