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S527

走査型プローブ顕微鏡(SPM)による複合材料の弾性率分布評価

弾性率(ヤング率)は材料の機械特性を評価する上で、基本的な情報の一つです。従来の走査型プローブ顕微鏡(SPM)による弾性率測定では、プローブのばね定数と変形量を利用して弾性率を推定しており、数10GPa以上の高強度材料(高弾性率材料)には対応できませんでした。しかし、プローブを試料と接したまま周期的に振動させ、共振周波数やQ値から測定するContact Resonance測定(接触共振測定)により、約300GPaまでの定量的な弾性率測定が可能となりました。Contact Resonance測定は1ピクセルごとに測定しながらスキャンするため、従来のSPM測定と同様に高空間分解能(0.1µm〜)でマッピング測定が可能です。その測定例として、リチウムイオン電池(LiB)の電極の疑似試料を測定した結果を示します。
SPM貯蔵弾性率像を図に示します。貯蔵弾性率像から数µmのSi粒子が明確に認められ、その形状と分布が分かります。さらに、平均貯蔵弾性率値も算出可能です。

図:疑似LiB電極断面の貯蔵弾性率像(30マイクロメートル角)

図:疑似LiB電極断面の貯蔵弾性率像(30µm角)

このようにSPMのContact Resonance測定では、従来のバルク分析とは異なり、数10〜数100GPaの硬い成分を含む複合材料の弾性率分布をサブµmオーダーの高分解能で観察することが可能です。この測定は、炭素材料や炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、セラミックスマトリックス複合材料(CMC)、金属セラミックス複合材料(MMC)等の他の複合材料の分析にも役立ちます。