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SEM-EBSD法を用いた指定結晶粒界部のFIB-TEM分析
収束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)装置と透過電子顕微鏡(TEM:Transmission Electron Microscope)を組み合わせることにより、指定領域の組織構造や組成、結晶性、化学状態をナノメートルオーダーで評価することが可能となります。今回、Nd2Fe14B焼結磁石の指定結晶粒界部({110}面を含む粒界)*1 の組織構造および組成分布をSEM(Scanning Electron Microscope)- EBSD(Electron BackScatter Diffraction Pattern)法、FIB-TEM法を用いて評価しましたので、以下に紹介します。
Nd2Fe14B焼結磁石の断面SEM像(反射電子像)、EBSD方位マップを図1、図2に示します。図1には主相であるNd2Fe14B粒子と三重点にNdリッチ部が観察されています。また、図2には{110}面を含む結晶粒界が確認できます({110}面:青色粒子の破線部に対応)。次に、指定結晶粒界部の断面暗視野STEM(Scanning Transmission Electron Microscope)像、EDS(Energy dispersive X-ray spectroscopy)ラインプロファイルを図3に示します。結晶粒界部には粒界相(厚み3nm程度)が存在し、O*2、Cu、Ndリッチであることが示唆されました。永久磁石の保磁力には、このような粒界相の厚みや組成が大きな影響を与えていると考えられます。そのため、これらの情報は、材料開発において有益な情報となることが期待されます
*1 ファセット面を含む結晶粒界
*2 酸化の影響を含む可能性あり