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電子回折法による土壌鉱物の同定
電子回折法は、結晶性試料の構造情報を得ることができる手法であり、結晶構造や結晶方位などを同定することができます。透過型電子顕微鏡(TEM)で電子線を制御することで、試料の特定領域を狙って電子回折パターンが取得でき、異種の結晶が混在する場合でも結晶構造の同定が可能です。一例として、土壌鉱物の結晶構造を同定した事例を紹介します。
土壌鉱物(山口県産シルト)のTEM像を図1に示します。ここから、様々な大きさや形状の鉱物が混在していることが分かります。次に、エネルギー分散型X線分光(EDS)測定を行ったところ、鉱物によって組成が異なると考えられます(鉱物1〜鉱物3)。
図1:山口県産シルトのTEM像
続いて、鉱物1〜鉱物3の電子回折パターンを図2に示します。これらの電子回折パターンから結晶面間隔などを求め、既知の結晶構造のものと照合を行いました。この際、EDS半定量値も参考にして候補の結晶構造を絞り込んだところ、各鉱物は以下の結晶構造だと推察されます。
鉱物1 | Orthoclase - KAlSi3O8(monoclinic) |
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鉱物2 | Goethite - FeO(OH)(orthorhombic) |
鉱物3 | Dickite - Al2Si2O5(OH)4(monoclinic)または Halloysite - Al2Si2O5(OH)4(monoclinic) |
図2:鉱物1〜鉱物3の電子回折パターン |