S423
TOF-SIMSによる無機ケイ素化合物の化学状態分析
飛行時間型2次イオン質量分析法(TOF-SIMS)は、試料表面に存在する有機化合物の化学構造情報を得るために広く用いられていますが、無機化合物の化学状態を評価した例は比較的少ないのが現状です。ここでは、シリコンウエハに窒化処理または酸化処理を施す前後の試料表面におけるケイ素化合物の化学状態を分析した例を紹介します。
上記試料の+2次イオン質量スペクトル測定結果を図1に示します。(b)処理前の試料表面から得られたスペクトルでは元素イオン種(Si)の他に、ケイ素を含む分子イオン種(45HOSi、70NSi2)等が観測され、表面は一部酸化および窒化されているものと考えられます。また、(a)窒化処理を施した試料からはN-Siの結合を示唆するイオン種(70NSi2、 154N3Si4等)が、(c)酸化処理を施した試料からはO-Siの結合を示唆するイオン種(45HOSi等)がそれぞれ強く検出されており、処理条件に対応したスペクトルの変化が確認されています。このように、TOF-SIMS分析を行うことにより、無機化合物においても化学結合状態に関する情報を得ることが可能です。
図1:シリコン基板表面に形成された無機ケイ素化合物の+2次イオン質量スペクトル