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S417

偏光ラマン分光法によるPbTiO3結晶膜の配向性評価

顕微レーザラマン分光装置は、最小1μmの分析径で物質の構造に関する情報を得ることができる装置です。さらに、励起レーザ光と散乱光の偏光面を制御して得られる偏光ラマンスペクトルからは、結晶の配向性に関する情報を得ることができるため、μmオーダーの分解能で、材料の配向性の分布状態を評価することが可能です。

図1は水熱合成法により製膜したPbTiO3結晶膜の光学顕微鏡像です。これより、この結晶膜にはRegion 1と示す白く輝いて見える領域と、それ以外の領域(Region 2)が存在していることが分かります。この二つの領域について、結晶性ならびに配向性を評価するため、偏光ラマンスペクトル測定を行いました。

各領域の偏光ラマンスペクトルを図2に示します。測定は後方散乱の配置で行い、非偏光[unpolarized]ならびに並行[z(yy)z]、垂直[z(yx)z]の配置で偏光ラマン測定を行いました。非偏光のスペクトルより、いずれの領域もペロブスカイト構造を有するPbTiO3結晶となっていることが確認できます。一方、偏光ラマンスペクトルについては、Region 2では非偏光のものと同様なスペクトルとなっていますが、Region 1ではz(yy)z偏光においてEモードが減少しA1モードが増大しているのに対し、z(yx)z 偏光においてはA1モードが消失していることが分かります。このことから、Region 2には配向性は認められませんが、Region 1では分極軸であるc軸が基板面に垂直に配向していると考えられます*1

水熱合成法により製膜された本結晶膜は、XRD分析からPbTiO3単層であることが確認されていますが、偏光ラマン分光法により、配向性の異なる領域が混在していることが明らかとなりました。このように、偏光ラマン分光法は、μmオーダーの分解能で配向性に関する評価を行うことが可能です。

図1:PbTiO<sub>3</sub>結晶膜の光学顕微鏡像

図1:PbTiO3結晶膜の光学顕微鏡像

図2:Region 1及び2の偏光ラマンスペクトル 図2:Region 1及び2の偏光ラマンスペクトル

図2:Region 1及び2の偏光ラマンスペクトル

*1 K. Nishida et al.: Jpn. J. Appl. Phys. 4 (2005) L827.

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