S416
XPSによる単層カーボンナノチューブの表面官能基分析
X線光電子分光法(XPS)では、表面から数nm程度の極浅い領域に存在する元素の化学結合状態に関する情報を得ることができます。
Aldrich社製の二種類の修飾済み単層カーボンナノチューブ (1)Carboxylic acid functionalized 及び (2)Amide functionalizedのC1sスペクトルに対し、ピークフィッティングを行った結果を図1に示します。得られた各ピークについてエネルギー値から結合状態を調べた結果、試料(1)、(2)からは各々O=C-O及びO=C-Nの結合状態に対応した成分が認められ、その他に両試料ともC-Oの結合状態に対応した成分が認められることが分かりました。
さらに、検出された他の元素についても同様に各スペクトルのピークフィッティングを行い、各成分の構成割合を算出したところ表1に示す値が得られました。これより、試料(1)、(2)の表面には、各々4%程度のO=C-O成分と5%程度のO=C-N成分、並びに3%程度のC-O成分が存在していることが分かりました。また、このピーク分離の結果は、検出されているN、Oの組成とも良く対応しており、XPSを用いることにより、表面官能基成分の定量的な評価が可能であることが分かります。
C | N | O | Si | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
π → π* | O=C-O | O=C-N | C-O | C-C (CNT) |
N-H | O-C | O=C | - | |
CNT (1) Carboxylic acid functionalized |
1.5 | 3.9 | - | 2.7 | 81.4 | - | 6.6 | 3.9 | - |
CNT (2) Amide functionalized |
1.1 | - | 5.0 | 3.3 | 78.7 | 4.1 | 2.4 | 4.8 | 0.6 |
図1:試料(1)、(2)のC1sスペクトルのピーク分離結果 |