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フタロシアニン系化合物のTOF-SIMS分析
フタロシアニン系化合物は色合いに優れ鮮明であることから、有機顔料として広く用いられています。また、機能性材料としてCD-R等の記録媒体にも応用され、近年では有機半導体材料としても注目され、研究が進められていますが、分子量が比較的大きく、溶媒に難溶なことから、有機分析手法による構造解析は必ずしも容易ではありません。
一方、表面分析手法の一つである飛行時間型2次イオン質量分析法(TOF-SIMS)は固体質量分析法であるため、LCやGCなどによる分離を行わずに、Biイオン源を用いて直接試料表面を分析することにより、試料の分子構造情報を高感度で得ることができます。
しかも、試料表面に存在する元素や分子の分布状態を高空間分解能で得ることができます。ここでは、種々のフタロシアニン系化合物の分子構造解析のために、TOF-SIMS測定を行いました(図1)。その結果、フタロシアニン系化合物の分子イオンに対応するピークが明瞭に観測されており、TOF-SIMS分析が有機顔料の分析に適していることが分かります。
図1:フタロシアニン系化合物の2次イオン質量スペクトル