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単層カーボンナノチューブの分析(XPS、ラマン分光法)
X線光電子分光法(XPS)とラマン分光法を用いて、単層カーボンナノチューブ(SWNT)を分析した結果を紹介します。測定試料はCNI社製のSWNT:(1)未精製品、(2)精製品、(3)フッ素化品です。XPSとラマン分光法による分析結果をそれぞれ図1、2に示します。
図1:XPSによるC1sスペクトルの測定結果
図2:ラマン分光法によるラマンスペクトルの測定結果
図1のように、未精製品、精製品では、XPSのC1sスペクトルはグラファイトと同様で、高結合エネルギー側に緩やかに裾を引く形状を示し、290〜291eVにはグラファイト結合のπ電子に由来するπ→π*シェイクアップによるピークが認められます。また、精製品では未精製品に比べてごく僅かにC-Oのピーク位置にスペクトルの盛り上がりが認められ、精製による表面官能基の増加が予想されました。一方、フッ素化品では、C-Fに由来するピークが明確に認められ、大部分のCがフッ素化されたものと考えられます。一方、ラマン分光法の結果(図2)から、未精製品、精製品ではSWNTに固有のスペクトルであるRBMとG-Bandが強く検出されているのに対して、フッ素化品ではアモルファスカーボンと類似のスペクトルを示しています。
以上の結果から、精製品は官能基をわずかに含むSWNTと考えられ、フッ素化品ではSWNTのCがフッ素化されることでグラファイト構造が失われていることが分かります。