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ラマン分光法による単層カーボンナノチューブの直径分布評価
単層カーボンナノチューブのラマンスペクトルには、1,600cm-1付近にグラファイトのラマン活性モードと同種の振動モードであるG-bandが観測されます。このG-bandは低波数側にサブバンドを伴っており、細いナノチューブではピーク間の分裂が大きく、太いチューブでは小さくなります。さらに、G-bandは金属チューブが選択的に共鳴すると、次式で表されるようなFano型のスペクトルに変化します。
ここで、ω0は固有振動数、Γはブロードニング因子、qは形状因子で、直径の細いナノチューブほどω0が低く、Γが大きくなることが分かっています*1。このため、G-bandのピークを詳しく解析することにより、ナノチューブの直径分布を評価することができます。
単層カーボンナノチューブのラマンスペクトル
図はCNI社製のHiPco法による単層カーボンナノチューブ、As Produced及びPurifiedのラマンスペクトルです。Fano型のスペクトルを考慮したピーク分離により、
As Produced | :ωG-=1541、Γ=49.4 |
Purified | :ωG-=1548、Γ=38.1 |
と算出されました。
As Producedの方がωG-が低くΓが大きいことから、直径の細いナノチューブをより多く含んでいることが分かります。
PurifiedはAs Producedの精製品ですが、この精製の工程で細いナノチューブが消失したものと考えられます。
単層カーボンナノチューブのラマンスペクトル:As Produced
単層カーボンナノチューブのラマンスペクトル:Purified
*1 齋藤理一郎,篠原久典「カーボンナノチューブの基礎と応用」培風館(2004).