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異方性材料の測定方向の違いによる弾性率評価
異方性材料は方向によって物理的性質が異なるため、方向による違いを評価することは重要です。異方性材料の弾性率を評価する一般的な試験は単軸引張試験ですが、試料形状に制約があります。
ナノインデンテーション法は、圧子を押込み除荷する過程において荷重と変位を連続的に測定し、得られたデータから力学物性(複合弾性率や硬さ)を算出する手法です。測定領域が微小であるため、試料形状に制約が少なく、測定方向を変えることで異方性材料の各方向における力学物性を評価することができます。
実施例として、異方性材料である高配向熱分解黒鉛(HOPG)を2方向から測定しました。その結果を図に示します。測定方向によって複合弾性率が異なり、断面の方が表面よりも高い値を示しました。この手法は押込み深さが浅いので、薄膜材料にも適用できます。
回数 | 複合弾性率 | |
---|---|---|
表面 | 断面 | |
1 | 11.1 | 20.3 |
2 | 10.2 | 19.1 |
3 | 10.3 | 18.5 |
4 | 10.9 | 19.5 |
5 | 11.7 | 19.0 |
平均 | 10.8 | 19.3 |
標準偏差 | 0.6 | 0.7 |
図:ナノインデンテーション法によるHOPGの評価結果