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プッシュアウト試験による炭素繊維/ポリアミド樹脂の界面強度評価
繊維強化樹脂のマトリックス樹脂には、エポキシ樹脂のように加熱すると硬化する熱硬化性樹脂と、ポリアミド樹脂のように加熱すると融解する熱可塑性樹脂があります。熱可塑性樹脂の長所は、成形は加熱・冷却だけで化学反応を伴わないため短時間でできる、靭性(耐衝撃性)が高い、リサイクルが容易などです。この事から、熱可塑性樹脂は短繊維の炭素繊維との組み合わせで小型の部品などに多く使われます。ポリアミド樹脂は、主鎖にアミド結合を持つ結晶性の代表的なエンプラですが、吸湿性が高く、樹脂特性が吸湿量に影響を受けます。
吸湿性が界面特性に与える影響を評価するため、真空乾燥有り(吸湿率が低い)と無し(吸湿率が高い)の試料をプッシュアウト試験しました。その結果を図に示します。真空乾燥有りの試料を裏面からSEM観察した結果、界面はく離していない様子でした。この事から、荷重変位曲線の変曲点は界面はく離発生点ではなく、繊維周りのせん断降伏点と推察します。このせん断降伏点は、真空乾燥有りの方が無しよりも高い結果でした。
図:炭素繊維/ポリアミド樹脂(PA66)のプッシュアウト試験結果