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PETシートの固体動的粘弾性測定(ねじり)
高分子材料の物性を把握する上で重要な測定方法の一つとして動的粘弾性測定があります。原理は、試料に周期的な変形(ひずみ)を与え、それによって生じる応力と位相差を検出することで貯蔵弾性率G’(弾性項)と損失弾性率G”(粘性項)を求めます。
シート(厚いもの)は、溶融粘弾性測定装置(ARES-G2)を用い、ねじりモードで測定を行う事ができます。以下にPET(ポリエチレンテレフタレート)シートの動的粘弾性測定をねじりモードで温度依存性測定を行った結果を図に示します。81℃のtanδのピークは、主分散(分子構造の主鎖の運動)であり、このピークトップ温度を一般的にガラス転移温度(Tg)の目安にします。115℃付近から弾性率(G’、G”)が上昇していますが、これは溶融状態から急冷に近い形で成形加工されたシートと思われ、非晶部が多く、この非晶部が昇温時に結晶化(いわゆる冷結晶化)し、硬くなったからと考えられます。結晶化の証明として、測定前は透明だった試料が150℃で測定を止めたものは白濁しています。(写真参照) 融点以上になれば溶融して透明になります。
さまざまな条件で成形加工(熱履歴)された試料について評価することが可能です。
図:PETシートの弾性率とtanδの温度依存性
装置 | 溶融粘弾性測定装置 ARES-G2(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製) |
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ジオメトリー | ねじり(動的測定) |
昇温速度 | 3℃/min |
周波数 | 1Hz |
ひずみ | 0.05%設定 |
温度範囲 | -140℃〜150℃ |
雰囲気 | 窒素気流中 |