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光散乱検出器(LS)による絶対分子量分布の測定原理
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)は示差屈折計(RI)による基準物質換算の相対分子量分布測定が一般的ですが、LSを併用することで絶対分子量分布を測定することができます。本技術資料では、LSによる絶対分子量分布の測定原理をご説明します。
ポリマー溶液におけるレイリー比R(θ)と重量平均分子量Mwは以下の関係にあります。
Cは試料濃度、A2は第二ビリアル係数、Kは装置乗数です。P(θ)は干渉のある場合の散乱光強度とない場合の散乱光強度の比を表し、θ = 0の時1/P(θ) = 1となります。
典型的なZimmプロットを図1に示します。弊社が所有するLS検出器は低角(7°)と直角(90°)の2角度の散乱光を測定することができ、分析試料の分子サイズに応じて検出器の角度を自動で切り替えながら測定を行います。
1. 低角度光散乱検出器(Low Angle Light Scattering:LALS)
分子サイズが一定よりも大きい領域(目安:10nm以上)ではLALSによって分子量を算出します。GPCは希薄濃度で測定し、LALSは低角度での測定のため、式1においてc = 0およびθ = 0と近似することができ、Zimmプロットの切片から分子量を算出することができます(図2)。LALSの欠点として、分子サイズが小さい試料においては十分な散乱強度が得られず、正確な分子量の測定が困難であることが挙げられます。
2. 直角度光散乱検出器(Right Angle Light Scattering:RALS)
前述したLALSの欠点を補うため、分子サイズが小さい領域(目安:10nm未満)では検出器をRALSに切り替えて測定を行います。散乱強度は角度依存性を有するため、通常は低角度で評価を行う必要があります。しかし、分子サイズが小さい領域に限っては角度依存性が発現しないため、より高感度で測定できる90°での評価が可能になります(図3)。