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P251

GPCにおける濃度依存性

ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)において、試料濃度が異なると溶出時間が変化することが知られています。高分子溶液は試料濃度が高い状態では、高分子間で接近・反発しあうような状態になり、低濃度に比べて分子サイズが小さくなります。そのためGPCでは溶出時間が遅れ、分子量が低く計算されることになります。

試料にポリエステル樹脂を用い、濃度を変化させてGPC測定を行った例を紹介します。本測定では、溶離液にヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、検出器に示差屈折計(RI)を使用しました。

ポリメチルメタクリレート(PMMA)換算分子量分布測定結果を表に、クロマトグラムの重ね書きを図1に、分子量分布の重ね書きを図2に示します。

表と図1、2より試料濃度が高くなるほど溶出時間が遅れ、分子量が低く算出されていることが分かります。濃度0.10 wt/vol%以下では概ね同等の分子量を示し、濃度の影響がほとんど無くなっているため、試料濃度は0.10 wt/vol%以下が好ましいといえます。また、濃度1.00 wt/vol%では、オーバーロードとなり、クロマトグラムが乱れていることが確認されます。

GPC測定を行うにあたり、十分なピーク強度を得られ、かつ濃度依存性を起こさない適切な濃度で試料調製を行うことが重要です。弊社では樹脂の種類および試料の特性を踏まえ、必要に応じて条件検討を行いながら、最適な濃度を選択しています。

表:PMMA換算分子量分布測定結果
試料名 濃度
(wt/vol%)
Mw Mn Mw/Mn 溶出時間
(min)
ポリエステル樹脂 1.00 11,400 4,700 2.4 26.2
0.50 14,100 5,700 2.5 25.6
0.20 15,600 6,200 2.5 25.2
0.10 16,200 6,500 2.5 25.1
0.05 16,400 6,500 2.5 25.1

図1:クロマトグラムの重ね書き

図2:分子量分布曲線の重ね書き

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