イソシアネート化合物の構造解析:官能基数の分析
イソシアネート化合物の構造解析の流れを弊社資料O535で紹介しています。本資料ではイソシアネート化合物に特徴的な分析項目として、官能基数を分析する手法を紹介します。化合物の構造解析では分子量や官能基数は重要な情報となりますが、水と反応するイソシアネート基を有している化合物では、LC/MSが困難であるといった理由から、分子量情報を得る手段が限定されるため、官能基数の情報を得ることは容易ではありません。今回、イソシアネート化合物としてイソホロンジイソシアネートを用いて官能基数を得る分析条件検討を行いました。手法として、2種類のアルコールでの誘導体化により安定化させて分子量測定を行い、得られたそれぞれの誘導体化物の分子量の差から官能基数を算出しました。本手法は、官能基数が増えても利用できる手法であるため、より複雑なイソシアネート化合物の構造解析に利用できると考えられます。なお、質量分析法としては、低分子化合物にはDI-MSかLC/MS、高分子化合物にはMALDI-MSが有効です。
表1:イソホロンジアミンの誘導体化前後の分子量測定結果と官能基数
誘導体化 | 構造 | 分子量 | 検出されたイオン | 備考 |
---|---|---|---|---|
誘導体化無し | 222 | 実施せず | そのままでは分析できない(LC/MS) | |
MeOHで 誘導体化 |
286 | 287(286+H)+ | イソシアネート基は2個と算出* | |
EtOHで 誘導体化 |
314 | 315(314+H)+ |
*イソシアネート基数の算出式
イソシアネート基数=[Mw(EtOH)−Mw(MeOH)] / 14
Mw(EtOH):エタノール誘導体化物の分子量
Mw(MeOH):メタノール誘導体化物の分子量
本手法をより高分子量のイソシアネート化合物に対して実施しました。高分子であるため、メタノールとエタノールで誘導体化処理した後にMALDI-MSにて解析を行いました。どちらの誘導体化物もポリオキシプロピレン(POP)の繰り返し単位に相当する58の間隔でイオンが検出されていることから、構造にPOPを有することが分かります。また、メタノール誘導体化物とエタノール誘導体化物の差が28であることから、イソシアネート基は2つ存在していることが明らかとなりました。1H-NMRやGC/MS、IRとあわせて解析した結果、POPの両末端にトルエンジイソシアネート(TDI)が結合した化合物であることが判明しました。
図1:試料のメタノール誘導体化物のマススペクトル
図2:試料のエタノール誘導体化物のマススペクトル
図3:化合物の構造