O557
N2雰囲気でのポリプロピレンの加熱IR測定
赤外分光分析(IR)は、樹脂の状態評価(結晶性、劣化等)を行うことの出来る分析法のひとつとして、広く用いられています。樹脂の状態変化を与える大きな要因としては、"熱"が挙げられ、O556にて加熱IR測定による状態評価を紹介しました。その中でも、劣化については、"熱"に加えて"雰囲気"が重要な要因となることがあります。
今回はその一例として、Air雰囲気及びN2雰囲気にてポリプロピレンを加熱し、その劣化状態の違いを調べた事例について紹介します。図1にAir雰囲気及びN2雰囲気でのポリプロピレンのIRスペクトルを示し、結果を表1に示します。
図:ポリプロピレンのIRスペクトル(Air雰囲気、N2雰囲気)
表 : ポリプロピレンの加熱IR測定結果
雰囲気 | 測定温度 | 加熱前との比較 | 推定される状態 |
---|---|---|---|
Air | 250℃ | シグナル発生※ | 分解(酸化劣化) |
室温(上記を放冷) | シグナル発生※ | 上記から変化なし | |
N2 | 250℃ | ブロード化、シグナル消失等 | 融解 |
室温(上記を放冷) | 同等 | 凝固(分解なし) |
※ : C=O、C-O-C等
以上の結果から、ポリプロピレンの劣化には、酸素(Air雰囲気)が要因のひとつであることが確認されました。このように、異なる雰囲気にて加熱IR測定を行うことにより、状態変化(劣化など)の原因推定等が行えることがあります。また、雰囲気や温度を組み合わせることにより、樹脂に限らず様々な試料の状態評価が行えることが期待されます。