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加熱IR測定によるポリプロピレンの状態評価
赤外分光分析(IR)は、樹脂の定性やその状態の評価(結晶性、劣化等)を行うことの出来る分析法のひとつとして、広く用いられています。今回はその一例として、ポリプロピレンを室温〜250℃まで段階的に昇温加熱し、その際のポリプロピレンの状態を評価した事例について紹介します。図1に各温度でのポリプロピレンのIRスペクトルを示し、結果を表1に示します。
図:ポリプロピレンのIRスペクトル(室温〜250℃)
表 : ポリプロピレン(融点:約160℃)の加熱IR測定結果
温度 | スペクトルの変化 | 推定される現象 |
---|---|---|
170℃付近 | ① 1000cm-1付近 消失 | 結晶性の消失(融解) |
200℃付近 | ② 1750cm-1前後 発生 | C=Oの発生(酸化劣化) |
③ 700~1500cm-1付近 発生 | 分解物の発生 |
以上のように、加熱IR測定により、樹脂の結晶性の変化や劣化(分解)の挙動を調べることが出来ます。IRスペクトルのみでの評価は難しい場合がありますが、その他の分析や物性と照らし合わせることにより、樹脂の評価法として、幅広い活用が期待されます。