15N-NMRによる含窒素有機化合物の構造解析(2)
(H-N HMBC 測定、H-N HSQC 測定)
核磁気共鳴分析(NMR)は、有機化合物の構造解析に非常に有効な分析方法です。O542にて、1H-NMRスペクトルや13C-NMRスペクトルだけではなく、15N-NMRスペクトルも構造解析において有効であることを紹介しました。
さらに今回は、構造解析における15N核の二次元NMR測定の活用事例を紹介します。
(例として、アセトアミドエタノール(下記)を用います。)
アセトアミドエタノール
N−Hの帰属(H-N HSQC測定)と隣接シグナルの確認(H-H COSY測定)
1H-NMRスペクトルにおいて、N-HとO-Hのシグナルを明確に識別することは困難です。しかし、15Nの二次元NMR測定のひとつであるH-N HSQC測定を用いることで、N−Hのシグナルを帰属することが出来ます。この測定では、Nと直接結合しているHとの間に相関が現れます(図1)。この結果から、シグナルDがN-Hであることが確認されました。
図1 アセトアミドエタノールのH-N HSQCスペクトル(拡大)
また、このシグナルD(N-H)に着目し、H-H COSYスペクトルを確認した結果、シグナルB(CH₂)と隣接していることが確認されました(図2)。
図2 アセトアミドエタノールのH-H COSYスペクトル(拡大)
Nから数結合先のシグナルの確認(H−N HMBC測定)
H-N HMBC測定においては、Nと数結合先(主に3結合先)のHとの間に相関が現れます。この結果から、Nの3結合先にシグナルA(アセチル基のCH₃)とシグナルC(CH₂)が存在していると推定されました(図3)。
図3 アセトアミドエタノールのH-N HMBCスペクトル(拡大)
以上のような15N核の二次元測定の結果は、1H核と13C核を用いた構造解析を補強することができ、場合によっては、構造解析に決め手になることもあります。ただし、15N核は感度が低いため、高濃度(数十%以上)に試料調製する必要があり、試料量として数百mg以上、かつ、重溶媒への溶解性が高いことが測定を行うための条件となります。