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O553

ナイロン加熱処理品のIRイメージング測定

赤外分光分析(IR)は、有機物の官能基を評価することが出来る代表的な分析法のひとつです。例えば、樹脂の劣化は官能基の変化(発生や減少)を伴うことが多く、その劣化評価において、IR分析は非常に有効な分析法となります。そこで今回は、その事例のひとつとして、ナイロン加熱処理品のIRイメージング測定について紹介します。

ナイロン加熱処理品として、ナイロンを空気中で300℃、30分間加熱したものを用いました。そのナイロン加熱処理品を切断し、断面の表面側付近について、イメージング法によるIR分析を行いました。図1に断面画像を示し、図2に各点のIRスペクトルを示します。その結果、表面側に近づくにつれて、C=O由来と推定される1700 cm-1付近の吸収が増加していることが確認されました。これは、酸化による劣化が、表面側から生じていることを示唆しているものと考えられます。またC=Oの分布を確認するために、1704 cm-1の吸光度を用いたIRイメージを図3に示します。その結果、表面から5μm程度の深さまでC=Oが発生(酸化)している様子を可視化することが出来ました。

このように、IR分析は、官能基の変化を評価する手法として有効な分析法であり、劣化、重合過程、状態分布など様々な評価において、その活用が期待されます。

図1:ナイロン加熱処理品(断面)の画像

図1:ナイロン加熱処理品(断面)の画像

図2:ナイロン加熱処理品(断面)各点のFT−IRスペクトル

図2:ナイロン加熱処理品(断面)各点のFT−IRスペクトル

図3:ナイロン加熱処理品(断面)のIRイメージ

図3:ナイロン加熱処理品(断面)のIRイメージ

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