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O543

MALDI-MSによる多糖類の分析

MALDI法は代表的なソフトイオン化法で、分子量数千〜数十万の生体高分子(タンパク、ペプチド、糖鎖など)において、質量分析(MS)による同定や解析を行うことができます。また、前処理が比較的簡便で、短時間の測定で多くの化合物情報を得られるため、食品や医薬品分野における品質管理のツールとしても応用が期待されています。 本報告では、MALDI-MSを用いた多糖類(ヒアルロン酸、難消化性デキストリン)の分析事例を示し、その解析結果について紹介します。

ヒアルロン酸

ヒアルロン酸はN-アセチルグルコサミンとグルクロンサンが結合した2糖単位の繰り返し構造を持つ多糖類であり、生体内においては軟骨の機能維持に重要な役割を果たしています。近年では食品添加物としても利用されており、品質管理の重要性が高まっています。
図1にヒアルロン酸のマススペクトルを示します。m/z3,700付近まで一連のイオンピークが検出され、そのピーク間隔がヒアルロン酸の繰返しユニットと一致しています。m/z1,200付近のピークを解析することにより、ヒアルロン酸は主にNa塩として検出されることが推定されました。

図1:ヒアルロン酸のマススペクトル(挿入:m/z1,190〜1,290付近の拡大)

図1:ヒアルロン酸のマススペクトル(挿入:m/z1,190〜1,290付近の拡大)

難消化性デキストリン

難消化性デキストリンは水溶性食物繊維の一種であり、経口摂取した際の有用性から特定保健用食品(トクホ)素材に認証され、数多くの食品に利用されています。
図2に難消化性デキストリンのマススペクトルおよび解析結果(Polytools)を示します。m/z4,000付近まで等間隔のイオンピークはヘキソースの繰り返しユニット(C6H10O5)と一致しています。また、その平均分子量は約2,000〜2,300Da程度と見積もられ、静的光散乱法で求めた値(約2,270Da)と良く一致しています。

図2:難消化性デキストリンのマススペクトルおよび解析結果(Polytools)

図2:難消化性デキストリンのマススペクトルおよび解析結果(Polytools)

また、図3に2種類のトクホ清涼飲料水のマススペクトルを示します。いずれの試料においても、難消化性デキストリンに相当するイオンピークを検出することができました。また、拡大図において、試料AとBでNaおよびKの付加イオンの検出パターンが異なっており、清涼飲料水中に含まれるNa、K塩の影響によるものと推測されました。

図3:トクホ清涼飲料水のマススペクトル(全体(左)、m/z990〜1,040付近拡大(右))

図3:トクホ清涼飲料水のマススペクトル(全体(左)、m/z990〜1,040付近拡大(右))

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