O507
重溶媒中の不純物分析
近年、核磁気共鳴分析(NMR)においては、高感度化が進み、精度の高さも見直されていることを背景に、定量分析や純度試験を目的とした利用が広がっています。その中で、これまで以上に重溶媒中の不純物が問題となる事例が増加しています。今回は、重メタノール中の不純物分析の一例を紹介します。
NMR分析にて、重メタノール中に混入したと推定される不純物のシグナルが検出されました(図1)。このシグナルの積分強度から、数十ppm程度の混入量と推定されます。また、カップリング(シングレット)及びケミカルシフト(1.9ppm付近)から、不純物の部分構造として、アセチル基の構造が示唆されました。
図1:重メタノールの1H−NMRスペクトル(上段:正常品、下段:不純物混入品)
次いで、GC/MS分析を行った結果、不純物混入品に特有のピークが検出されました(図2)。上記NMRの結果を踏まえ、このピークのマススペクトルの解析を行った結果、このピークは「重水素交換された酢酸」であると推定されました(図3)。
図2:重メタノールのGC/MSトータルイオンクロマトグム(上段:正常品、下段:不純物混入品)
図3:ピーク●のマススペクトル
以上の結果、重メタノール中に混入した数十ppm程度の不純物は、酢酸(CH3COOD)であると推定されました。