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黒色異物の同定
−黒色異物の分析−
プラスチック成形品や加工食品中に混入している異物は、製造責任の観点から重大な問題となる。異物の正体や混入経路を調べ、早急に対策を練らなくてはならない。異物の特定には一般的に顕微赤外測定が利用される。 通常は赤外スペクトルの解析から、ほとんどの異物の特定が可能である。
しかし熱劣化黒色異物の場合は、赤外吸収は1,800〜1,500cm-1領域にのみ現れ、種々の物質で似たようなパターンを示すため特定は困難である。
このような黒色異物は熱分解ガスクロマトグラフ測定を行うことで特定ができる。劣化前の構造が少量残存していれば、その物質由来の特徴的な熱分解生成物の検出により特定が可能となる。
図1:黒色異物の同定
実施例
熱劣化黒色異物の特定が可能となった一例を以下に示す。
顕微赤外測定のスペクトル
黒色異物の顕微赤外測定によって得られたスペクトルを以下に示す。
図2:顕微赤外測定のスペクトル
このスペクトルから異物を特定することは困難である。
熱分解ガスクロマトグラフ質量分析
次にこの黒色物の熱分解ガスクロマトグラフ質量分析を行った。
パイログラムを以下に示す。
図3:熱分解ガスクロマトグラフ質量分析
検出された熱分解生成物のほとんどはn-パラフィンおよびα-オレフィンであり、異物はポリエチレン系の物質が熱劣化した物と推察される。