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カーボンブラックの低加速電圧による暗視野STEM観察
カーボンブラックは、油やガスを不完全燃焼あるいは熱分解することにより得られる煤状の炭素微粒子です。カーボンブラック粒子は非常に微細であり、粒子同士が融着し連結した3次元鎖状構造を有すことから、着色性、導電性、紫外線吸収性、高比表面積などの特徴があります。それらの特徴で高比表面積を利用して吸着剤やフィルター、触媒担体などに応用されています。これらの機能をより向上させるためには、表面だけでなく内部に存在する連続孔にも着目する必要があります。ここでは、カーボンブラックの内部構造の情報を得ることを目的として、加速電圧を変えて暗視野STEM観察を行いました。下図に加速電圧30kVおよび120kVで観察したカーボンブラックの暗視野STEM写真を示します。
カーボンブラックの粒子表面では積層構造が認められ、粒子内部は中空に近い構造であると推測されます。また、カーボンブラックを加速電圧30kVで観察することで、加速電圧120kVの場合よりも内部の構造をより詳細に把握することができます。これは低加速化することにより電子線の散乱能が増加し、像コントラストが向上したものと考えられます。
図:カーボンブラックの暗視野STEM写真