M202
サファイア基板上低温バッファ層のモザイク構造解析
図1:モザイク構造の模式図
サファイア基板とGaNの格子不整合の緩和のため、基板表面に低温バッファ層が堆積されています。この層は全体としては基板情報を引き継いだ単結晶に近い構造ですが、モザイク構造と呼ばれるような、個々の結晶粒が回転(ツイスト)や傾斜(チルト)していることが知られています(図1)。
サファイア基板上低温バッファ層の断面TEM写真を図2(a)に示します。低温バッファ層は高さが25nm程度のナノサイズ結晶粒からなる連続膜として観察されます。低温バッファ層の平面TEM写真と電子回折パターンを図2(b)に示します。電子回折パターンにおいて各スポットが円周方向に伸びていることが、モザイク構造におけるツイストに対応します。ツイストの起源を調べるため、図2(c)に示すように高分解能平面TEM写真を測定し、個々の結晶粒のFFTパターンからサファイア基板に対するツイスト角を求めました。図2(c)と同一視野の結晶粒ごとのツイスト角を、カラーマップとして図2(d)に示します。各結晶粒のツイスト角は-4.4〜+4.3°程度の分布を示し、隣接する結晶粒同士でも数度の角度差があることが分かります。また、近いツイスト角を有する結晶粒が集まる傾向があることも分かってきました*1。
図2:低温バッファ層の(a)断面TEM写真、(b)平面TEM写真・電子回折パターン、
(c)高分解能平面TEM写真・各結晶粒のFFTパターン、(d)ツイスト角マップ・平面TEM写真合成
*1 Matsubara et al., Jpn. J. Appl. Phys. 55, 045501 (2016).
(サンプル:山口大学 只友一行教授ご提供)