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LiB正極のTDS-MSによる温度特性の分析(1)
リチウムイオン二次電池は、エネルギー密度の高さと電圧の高さから、小型・軽量化が可能であり、電気的にもさまざまな長所を有することから、新たな電源として著しい成長を見せています。
正極は無機化合物の活物質・導電材・バインダーおよび集電体より構成されていますが、充放電中の発熱によりガスが発生する場合は、重大なトラブルの原因となります。
その温度特性を把握する手段として、TDS-MSが有効です。TDS-MSは、高真空中で試料を加熱することにより発生するガスを分析する装置で、微量のガスを高感度に定量することができ、その定量下限は1E+13(分子個数)レベルです。このためサンプル量が少ない場合でも、正確な測定が可能です。
図1に示したクロマトグラムは、コバルト酸リチウムを活物質とする正極全体を500℃まで加熱した際に発生するガスを測定した一例です。活物質の格子構造が乱れて発生する酸素は微量ですが、300℃以下の比較的低温域でエタンが発生している様子や、原料由来と推定されるCO2が高温域で発生している様子が観察されました。
図1:各種ガスの発生状況