F094
熱走査FT-IR(ATR)法によるウレタン樹脂分解過程の分析
ウレタン樹脂はフォームやエラストマーなどに使用され、イソシアネートとポリオールの反応で得られますが、ウレタン結合は耐熱性が低いという問題点があります。
FT-IRは物質に赤外光を当て、得られた赤外吸収スペクトルから原子団や官能基を特定することができる装置ですが、ポリマーの熱分解反応の過程を調べるのに有効です。
写真1:Cary670型
装置 | Agilent社製 Cary670型 (写真1) |
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ATRユニット | Specac社製 シールド加熱ダイヤモンドATR |
プリズム | ダイヤモンド |
測定範囲 | 400cm-1〜5,200cm-1 |
走査温度 | 室温〜300℃(シールドあり) 室温〜350℃(シールドなし) |
IRの試料観測部分に、シールド加熱ダイヤモンドATRを設置して測定を行いました。
試料はポリエステルポリオール系ウレタンであり、C=O伸縮振動のピークに注目して、分析を行い図1に示しました。加熱に伴い、耐熱性の低いウレタン結合(-NHCOO-)が分解してC=O(1,700cm-1付近)のピーク強度が弱くなるのに対し、エステル結合(-COO-)のC=O(1,730cm-1付近)のピーク強度は、この温度域ではあまり変化していない様子が観察されました。
図1:ウレタン結合の分解挙動