ポリマー材料の物性評価(1)
−引っ張り強度、耐衝撃性など−
エンジニアリングプラスチックスをはじめとして、ポリマー材料を工業材料として利用するには、その材料が持つ各種特性を知ることが必要になります。その特性は大別すると「物理的特性」と「化学的特性」になりますが、一般的には更に
1 | . | 機械的特性 | 2 | . | 熱的特性 | 3 | . | 電気的特性 | 4 | . | 光学的特性 | |||
5 | . | 基本物理的特性 | 6 | . | 化学的特性 | 7 | . | 成形加工性 | 8 | . | 耐環境特性 |
などに分類されます。このうち1〜5は物理的特性で、7、8は物理的および化学的特性が複合された特性といえます。
このように、ポリマー材料の特性は大変広範囲にわたって調べることが必要となりますが、このうちでも機械的特性は最も重要で基本的な項目ですので、多くの場合にまず最初に検討されるものとなります。
この特性は本来、力学的性質を意味するものですが、慣用的に機械的特性または機械的性質と呼ばれていて、「外力に対する物体の力学的応答性」というように定義されます。
この機械的特性は、その外力の種類によって(1)引張り特性、(2)圧縮特性、(3)曲げ特性、(4)せん断特性などに分類され、また外力のかかり方によって、(1)静的特性、(2)衝撃特性、(3)クリープ特性・応力緩和特性、(4)疲労特性などとも分類されます。
この中でも、静的特性や衝撃特性などの短期特性が一般にその材料のカタログ特性として紹介されます。これらは、ポリマー材料から射出成形法などにより作製された試験片を用いてJIS規格、ISO規格、ASTM規格など一定の試験法(最近では特にISO対応のJIS規格)により測定されたものですので種々の比較評価が可能になります。
このような機械的特性を調べることにより、例えば研究開発中のポリマー材料が既存の工業材料に対してどのような位置付けに有るかを検討したり、その用途を探したりする上での一助になることが考えられます。また、開発しようとしている製品に対してどのような材料が適しているかの判断にも役立てることができます。
市販の代表的なポリマー材料につき機械的特性等を測定した例を次表に示します。
市販ポリマーの機械的特性(一例)
項目 | 単位 | ポリアミド6 | ポリアセタール | ポリカーボネイト |
---|---|---|---|---|
引張強さ | MPa | 75 | 62 | 60 |
引張破壊呼びひずみ | % | 150 | 35 | 100 |
曲げ強さ | MPa | 110 | 87 | 90 |
曲げ弾性率 | MPa | 2,600 | 2,500 | 2,200 |
圧縮強さ | MPa | 60 | 110 | 75 |
せん断強さ | MPa | 66 | 53 | 37 |
シャルピー衝撃強さ(ノッチ付) | kJ/m2 | 4 | 6 | 90 |
(注) | ・ | 各ポリマーは、それぞれ代表的な一般グレード | |
・ | ポリアミド6は絶乾時の値 | ||
・ | 測定法はISO規格に準拠 |