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ポリアミド樹脂の末端基定量
高分子は末端に有している官能基が諸物性に影響するため、その構造解析が非常に重要となります。構造解析手法としてNMRは有用ですが、末端基は極微量しか存在しないことから、感度に問題があったり、他のシグナルと重なったりした場合、解析困難となります。
滴定法による末端基定量は、特定の官能基との選択的な反応を利用するため、高感度かつ高精度で分析が可能となります。
ポリアミド樹脂は、日常生活の様々な場面で使用されるプラスチック素材です。構成モノマーにより非常に多くの種類の樹脂がありますが、共通して末端にカルボキシル基とアミノ基を有しています。その末端基は、中和滴定により定量することができます。
以下に、滴定条件を記載します。カルボキシル基の場合は、高温での溶解が必要であり、アミノ基の場合は腐食性のあるフェノール系の溶媒を使用することになるため、いずれも取扱いには注意を要します。
溶媒 | ベンジルアルコール |
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温度 | 180℃ |
滴定液 | 0.01mol/l KOH-エタノール |
溶媒 | フェノール/メタノール(9:1) |
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温度 | 室温 |
滴定液 | 0.01mol/l 塩酸 |
表にポリアミド樹脂の滴定法による末端基定量の結果を示します。
相対粘度の比較から、試料Aは、試料Bより分子量が大きいと推察されるので、末端基量が少ないと予想されます。しかし、その傾向はカルボキシル基には見られますが、アミノ基では試料間で同等の数値となりました。
試料 (ポリアミド) |
カルボキシル基 (mmol/g) |
アミノ基 (mmol/g) |
相対粘度 (96% H2SO4) |
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A | 0.047 | 0.041 | 3.25 |
B | 0.066 | 0.039 | 2.41 |