HOME > 分析対象 > 材料 > 高分子材料
B114

ポリアミド樹脂の末端基定量

高分子は末端に有している官能基が諸物性に影響するため、その構造解析が非常に重要となります。構造解析手法としてNMRは有用ですが、末端基は極微量しか存在しないことから、感度に問題があったり、他のシグナルと重なったりした場合、解析困難となります。
滴定法による末端基定量は、特定の官能基との選択的な反応を利用するため、高感度かつ高精度で分析が可能となります。

ポリアミド樹脂は、日常生活の様々な場面で使用されるプラスチック素材です。構成モノマーにより非常に多くの種類の樹脂がありますが、共通して末端にカルボキシル基とアミノ基を有しています。その末端基は、中和滴定により定量することができます。

以下に、滴定条件を記載します。カルボキシル基の場合は、高温での溶解が必要であり、アミノ基の場合は腐食性のあるフェノール系の溶媒を使用することになるため、いずれも取扱いには注意を要します。

カルボキシル基
溶媒 ベンジルアルコール
温度 180℃
滴定液 0.01mol/l KOH-エタノール
アミノ基
溶媒 フェノール/メタノール(9:1)
温度 室温
滴定液 0.01mol/l 塩酸

表にポリアミド樹脂の滴定法による末端基定量の結果を示します。

相対粘度の比較から、試料Aは、試料Bより分子量が大きいと推察されるので、末端基量が少ないと予想されます。しかし、その傾向はカルボキシル基には見られますが、アミノ基では試料間で同等の数値となりました。

表:ポリアミド樹脂の滴定法による末端基定量の結果
試料
(ポリアミド)
カルボキシル基
(mmol/g)
アミノ基
(mmol/g)
相対粘度
(96% H2SO4
A 0.047 0.041 3.25
B 0.066 0.039 2.41

前のページに戻るこのページのトップへ