変異原性の判定について
Ames試験の試験結果をもとに、変異原性の有無を判定します。ここでは、この判定について説明します。
(1)2倍法
Ames試験において、被験物質の用量の増加とともに復帰変異コロニー数が陰性対照値の2倍以上に増加した場合、陽性と判定する方法があります。この判定方法を2倍法といいます。
(2)再現性
Ames試験によって変異原性の有無を判定するにあたっては、再現性も重要です。通常、2回試験を実施し、2回の試験いずれも復帰変異コロニー数が陰性対照値の2倍以上に増加すれば陽性、いずれも復帰変異コロニー数が陰性対照値の2倍以上に増加しなければ陰性と判定します。 なお、2回の試験で結果が食い違う場合があります。具体的には、用量設定試験では復帰変異コロニー数が陰性対照値の2倍以上に増加しなかったが、本試験では2倍以上に増加した場合、あるいはその逆の場合です。こうした場合は確認試験を実施し、その結果を考慮して判定します。確認試験で復帰変異コロニー数が陰性対照値の2倍以上に増加すれば、陽性の結果の再現性が確認されたとして判定は陽性となります。確認試験で復帰変異コロニー数が陰性対照値の2倍以上に増加しなければ、陰性の結果の再現性が確認されたとして判定は陰性となります。 2回の試験で結果が食い違う原因としては、試験菌株の状態の微妙な違い(2回の試験での菌株の感受性の違いなど)が考えられます。また、2回の試験で用量の設定が異なることが考えられます。概して、用量設定試験は公比4、本試験は公比2で試験を実施しており、用量設定試験では設定しなかった用量において、本試験で陰性対照値の2倍以上の復帰変異コロニー数が得られる場合があります。
(3)生育阻害の考慮
安衛法ガイドラインでは、生育阻害の認められない用量が4段階以上あることが変異原性の評価に必要とされています。ただし、変異原性が認められる場合は、安衛法ガイドラインでは生育阻害の認められない用量が4段階以上あることを求めていないため、生育阻害の認められない用量が4段階未満の場合でも陽性と判定しています。このため、用量設定試験で復帰変異コロニー数が陰性対照値の2倍以上に増加しない場合、生育阻害の認められない用量が4段階未満であれば、生育阻害の認められない用量が4段階以上得られるように用量を設定して本試験を実施し、さらに確認試験を実施して、陰性の結果の再現性を確認することになります。
弊社では(1)〜(3)で説明した手順を経て、変異原性の有無を判定します。