HOME > 分析対象 > ライフサイエンス > 安全性評価 > 安全性試験
SE126

生育阻害について

Ames試験の試験結果表において、復帰変異コロニー数の右に * 印がついていることがあります。これは、その菌株のその用量のプレートで生育阻害が観察されたことを意味しています。ここでは、この生育阻害について説明します。


(1)生育阻害とは

Ames試験で使用するネズミチフス菌はヒスチジン要求性、大腸菌はトリプトファン要求性です。これらの菌株が突然変異を起こすと、それぞれヒスチジン非要求性、トリプトファン非要求性となり、プレート上肉眼で見える大きさまで増殖します。一方、要求性株は、Ames試験実験条件下では少量しかアミノ酸が存在しないため、数回分裂した後増殖は停止し、プレート上には顕微鏡で観察できる程度の微小なコロニーが形成されます。しかし、被験物質の毒性が発現すると、これらの要求性株の生育が阻害されます。顕微鏡にて各被験物質用量のプレートを陰性対照のプレートと比較して観察することで、要求性株の増殖の程度の違いを識別し、生育阻害の有無を判定します。

(2)生育阻害と変異原性との関係

一般に、変異原性が最も強く発現する用量は、生育阻害が発現する用量からわずかに低いあたりと言われています。一方、少数ですが生育阻害が発現する用量で変異原性が発現することもあります。

(3)生育阻害が試験の設定条件に与える影響

生育阻害が観察されることは、その被験物質の用量で菌株が死滅していることであり、その用量では変異原性の有無を正しく評価できません。また、(2)で述べたように、変異原性が最も強く発現する用量は、生育阻害が発現する用量からわずかに低いあたりと言われています。さらに、安衛法ガイドラインでは、生育阻害の認められない用量が4段階以上あることが変異原性の評価に必要とされています。2回以上の試験を実施する場合、用量設定試験では公比4、本試験では公比2で用量を設定することを考え合わせ、通常、本試験では、生育阻害が観察された用量を最高用量として公比2で6段階の用量を設定します。

(4)生育阻害が変異原性の判定に与える影響

安衛法ガイドラインでは、生育阻害の認められない用量が4段階以上あることが変異原性の評価に必要とされています。試験回数1回の簡易試験では、1回の試験で生育阻害の認められない用量が4段階未満の場合があり、その場合判定不能となります。しかし、変異原性が認められる場合は、安衛法ガイドラインで生育阻害の認められない用量が4段階以上あることを求めていないため、生育阻害の認められない用量が4段階未満でも判定は陽性となります。

安衛法以外の試験ガイドラインでは用量の設定に関して詳細な規定がありませんが、弊社では安衛法試験ガイドラインを準用するかたちで試験条件の設定、判定を行っています。

前のページに戻るこのページのトップへ