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工業製品の異物・変色へのATP活性測定の利用
私たちの環境に数多くの微生物がいることは良く知られています。食品、医薬品製造や医療現場では環境微生物をコントロールすることが非常に重要ですが、他の工業分野では関心が低いようです。しかし、工業製品に異物や変色などの支障を引き起こすことは、案外知られておりません。また、これらの問題は原因を特定するのが難しいのですが、ATP活性測定が有用であることをご紹介いたします。
ATP(アデノシン三リン酸)とはあらゆる生物のエネルギー代謝に欠かせない物質です。生体エネルギーの通貨とも呼ばれ、生物に共通して広く存在します。また、ホタルの発光原理を利用して迅速・高感度に検出できることから、微生物や食物残渣の汚染指標に最適であり、病院や食品製造所などにおいて清浄度のチェックに利用されています。
ここでは応用例として、プラスチック製品ついて、風呂ふたの例をご紹介します。
図(写真)の変色について、綿棒にて約1cm2の範囲を5、6回拭取りATP活性を測定しました。変色部分と白色部分のATP活性に有意な差が認められ、その値から変色部分の微生物汚染度が高いことがわかりました。これから、変色は微生物が原因であると推定されました。
図:風呂ふたの変色 |
測定箇所 | ATP活性 | 微生物汚染度 |
---|---|---|
[1]変色部分 | 700〜1,000 | 高い |
[2]白色部分 | 50〜60 | 低い |
キッコーマン株式会社の「ATP拭取り検査キット」を用いました。