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XPS価電子帯スペクトルによる材料評価
X線光電子分光法(XPS)の内殻スペクトルを用いて、CもしくはC、Hを構成元素とするカーボン材料やポリオレフィン系ポリマー材料などを相互に区別することは非常に困難です。XPSでは、これらの材料から検出される元素はCのみであり、元素組成から判断することができません。また、C1s内殻スペクトルでは、C-CおよびC-H構造を区別することは困難です。ここでは、材料の結晶構造の違いを敏感に反映するXPS価電子帯スペクトルを用いて材料の解析を行った例を紹介します。
試料として、ポリエチレン(PE)、ポリプロプレン(PP)、グラファイトを用いて、それらの内殻と価電子帯スペクトルを測定しました。図1に、各試料のC1s内殻スペクトルを示します。3試料を比較すると、C1sスペクトルのピーク位置、形状ともに大きな違いは認められず、材料を区別することはできません。
一方、図2のように、化学結合に大きく関与する価電子帯スペクトルを測定することにより、各種材料の構造の違いがスペクトル形状に反映されます。フィンガープリントとして価電子帯スペクトルを利用することによって、これらの材料を判別することが可能となります。
図1:C1s内殻スペクトル | 図2:価電子帯スペクトル |