S382
ヘテロ接合界面に生成した微小ドメインの解析
一般的に、薄膜材料は基板上に作製されます。例えば半導体材料では、数層から数十層が基板上に成膜されます。この時、それぞれの膜の組成や結晶構造が異なる場合をヘテロ成長と呼び、その界面では結晶欠陥や拡散層等が生成し、材料の特性に大きく影響すると考えられています。基板と膜あるいは膜と膜の界面構造は、主に透過型電子顕微(TEM)を用いて解析されています。市販白色LEDのサファイア基板とGaN膜の接合界面を解析した例を示します。
サファイア基板とGaN膜の接合界面の断面TEM写真を図1に示します。両者の格子定数の違いのため、ミスフィット転位が界面で発生し、基板直上のGaN膜中には多数の結晶欠陥(積層欠陥)が観察されています。これとは別に、基板側に三角状の明るいドメインが観察され(矢印部)、その拡大写真を図2に示します。格子縞の間隔はドメインが基板と同じサファイアであることを表していますが、基板とは何かが異なることも明らかです。電子線を照射しながら、一定時間毎に測定したEELS(Electron Energy Loss Spectroscopy)スペクトルを図3に示します。電子線照射により、ドメインからN2ガスが発生していることが確認されました。すなわち、ドメインには元々高濃度の窒素が含まれており、その窒素は固体窒素の状態で存在すると推定されます。
図1:GaN/サファイア基板の断面TEM写真 | |
図2:GaN/サファイア接合界面に発生したドメインの断面TEM写真 | 図3:電子線照射しながら測定したEELSスペクトル |
Matsubara et al., Jpn. J. Appl. Phys., 45, 279 (2006)