S335
粒子径解析ソフトの応用
材料の特性を決める重要な因子の一つとして構成する粒子のサイズがあげられます。特に、多結晶材料では単結晶領域の大きさやその分布、さらに界面に存在する粒界の厚みを正確に把握することが要求されています。今回、市販水平記録HDD媒体(2001年製、記憶容量40GB)中の磁性粒子を粒子解析ソフト(住友金属テクノロジーズ製)を用いて解析しました。
図1にHAADF(High-Angle Annular Dark Field)-STEM像を示します。結晶である磁性粒子は明るく、逆にアモルファス構造を示す粒界部分は暗く観察されるため、単結晶領域を明確に区別することができます。同時に磁性粒子中には粒界と同一構造を有するナノメーターの組織が析出していることも分かりました。一般的にHAADF-STEM像は試料中の組成を反映する「Z-コントラスト」と呼ばれていますが、このSTEM像は組成の情報ではなく、結晶性の情報により形成されており、「回折コントラスト」と言えます。*1
この像を粒子解析して得られた結果を図2に示しました。左側が磁性粒子の面積の分布、右側は1つの粒子を真円と仮定して求めた粒子径分布です。平均粒径は約12nmと非常に小さく、さらに詳細に解析することにより、約1nmの粒界部分がSTEM像全体の約19%を占めていることも明らかとなりました。
図2:粒子解析結果
*1 K. Shoda, T. Matsubara and S. Takeda, J. Electron Microsc., 54, 1-9 (2005)