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S231

ESCAによる表面官能基濃度の定量(1)
ポリアクリル酸表面の –COOH基の気相化学修飾法によるESCA分析

気相化学修飾法によるESCA分析を用いることによって、ポリマー表面のカルボキシル基(-COOH基)濃度を高感度で正確に定量することができます。*1 *2
気相化学修飾法では、液相での化学修飾法と比較して、基材の膨潤や溶媒成分の残留などの問題点が少なく、カルボキシル基と定量的に反応する試薬を用いれば、材料表面のカルボキシル基濃度を正確に求めることが可能です。今回は反応試薬にトリフルオロエタノール、ジ-t-ブチルカルボジイミド、触媒にピリジンを用いて、ポリアクリル酸塗布膜表面のカルボキシル基を化学修飾する方法を検討しました。

反応式

反応式

反応した試料表面のESCA測定を行い、表面組成とC1sスペクトルから反応率を求めました。

結果

表面化学修飾前後のポリアクリル酸塗布膜の表面組成を表1に、C1sスペクトルを図1にそれぞれ示します。

表1:化学修飾前後のポリアクリル酸塗布膜の表面組成 ( )内は理論組成
試 料 C N O F
化学修飾前 60.3(60.0) 1.14(−) 38.5(40.0) −(−)
化学修飾後 48.8(50.0) 0.31(−) 19.8(20.0) 31.1(30.0)

 表1の( )内に、ポリアクリル酸(化学修飾前)の理論組成とトリフルオロエタノールで-COOH基を100%化学修飾したポリアクリル酸(化学修飾後)の理論組成を示します。また、図1に表面化学修飾前後のC1sスペクトルを示します。表1および図1のように、カルボキシル基はほぼ100%トリフルオロエタノールで化学修飾されていることが分かります。

図1:化学修飾前後のポリアクリル酸塗布膜のC1sスペクトル

図1:化学修飾前後のポリアクリル酸塗布膜のC1sスペクトル

[参考文献]   *1    Y. Nakayama, T. Takahagi and F. Soeda, J. Polym. Sci. :Part A, 26, 559(1988).
    *2    A. Chilkoti, B. D. Ratner and D. Briggs, Chem. Mater., 3, 51(1991).

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