PR0923a
HDD(ハードディスクドライブ)媒体の粒界解析
HDD装置はコンピュータのメインの記憶装置で、最近では映像の記録として益々その重要性が高まっています。HDD装置の重要な部品は読み書き用のヘッドと媒体です。高密度化のために媒体に要求される磁気特性はその粒界構造に大きく関係しているため、ナノメーターという粒界の結晶性や組成分布を調べることは非常に重要です。
そこで、市販HDD装置(記憶容量1GB、1997年製)の媒体の粒界を分析電子顕微鏡(TEM)を用いて調べました。上段写真は記憶容量の異なる試料のMFM像です。記憶密度の違いがトラック領域の違いを反映しています。中段写真から、厚み約1.5nmの粒界は結晶性であることが分かります。また、下段写真より粒界へCrが偏析していることが確認され、これにより粒界の磁性を低下させ、磁性粒子間交換相互作用の低減化を図り高密度化に寄与していると言えます。
MFM(磁気力顕微鏡)像
左写真:記憶容量1GB 右写真:記憶容量40GB
これより1トラック領域は、1GBが3,000×400nm、40GBが670×100nmであることが分かります。
(スケールは1辺が10μmです)
粒界のHR-TEM像
粒界のHR-TEM像(左写真)、領域1〜3のFFTパターン(右写真)TEM写真中央で格子縞が乱れている領域(矢印部)が粒界に対応します。また、粒内には多くの結晶欠陥(積層欠陥)が観察されています。
HAADF-STEM像とEDSマッピング像
粒界へCrが偏析しており、その厚みは約1.5nmと見積もることができます。