NMRによるアルコール発酵のリアルタイムモニタリング
当社で導入しているリアルタイムモニタリングNMRのシステムを紹介します。
反応溶液を、反応容器と核磁気共鳴分析装置(NMR)の間で循環させることにより、反応過程をNMRにてリアルタイムモニタリングすることが出来ます(図1)。また本法は、NMRを用いていることから、他の分析装置を用いたリアルタイムモニタリングと比較し、下記の特長があります。
リアルタイムモニタリングNMRの特長
- 生成する物質の構造情報が得られる
- 『モル比』で量比を評価出来る
図1:リアルタイムモニタリングNMRの装置構成(Bruker Japan製 InsightMRを使用)
事例として、イースト菌によるグルコースのアルコール発酵の過程をモニタリングした結果を紹介します。反応液の1H-NMRスペクトルから、時間経過とともに原料のグルコースのシグナルが減少し、エタノール由来のエチル基のシグナルが発生していることが分かります(図2)。
(図2及び図3にて、各色のシグナルに着目)
図2:アルコール発酵のリアルタイムモニタリングNMR結果(1H-NMRスペクトル積み重ね)
α-グルコース(CH)及びエタノール(CH3、CH2)のシグナルの積分値をプロットした結果を下記に示します。この結果から、このアルコール発酵の終点は、40時間付近であることが分かりました。また、積分値から各成分のモル比に換算*1した結果、今回の反応条件下においては、初期のグルコース(原料)に対し、約1モル当量のエタノール(生成物)が生成したということが分かりました。
*1:初期のグルコース量を1とした。α-グルコース/β-グルコース=38/62と仮定。
図3:アルコール発酵のリアルタイムモニタリングNMR結果(積分値、モル比)
以上のように、リアルタイムモニタリングNMRは、反応の進行具合、生成物の構造確認、原料と生成物のモル比等を確認する手法として、非常に有効です。本システムは、今後、幅広い分野(医薬品、食品、化粧品、水質、天然物、等)で、様々な評価(溶解、発酵、劣化、浄化、等)に適用できると考えております。