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STD-NMR法による医薬品とタンパク質の相互作用解析
STD-NMR法は、医薬品分野において、タンパク質との相互作用の有無を調べる手法として、広く用いられています(技術資料「飽和移動差NMR法(STD-NMR法)」参照)。今回は、STD-NMR法を用いて、2つの医薬品の相対的な相互作用の強弱を調べた事例について紹介します。
ワルファリンとインドメタシンは、血漿タンパクの同じ部位に結合することが知られています。またインドメタシンは、ワルファリンを血漿タンパクから遊離させ、抗凝血作用を増強させると言われています。そのため、タンパク質との相互作用の強さとしては、『ワルファリン < インドメタシン』と考えられます。これを確かめるため、ウシ血清アルブミン(BSA)にワルファリン及びインドメタシンを加えた緩衝液を調製し、STD-NMR法で測定を行ってみました。図1に模式図を示し、図2にSTD-NMRスペクトル及び通常の1H-NMRペクトルを示します。
図1:STD-NMR法の模式図(相互作用の強さが異なる2種の医薬品の場合)
図2:STD-NMRスペクトル及び1H-NMRスペクトル
STD-NMRスペクトルと、1H-NMRスペクトルとを比較すると、インドメタシンの積分比が1.5から4.3へ大きくなっています(図2参照)。この結果は、タンパク質への相互作用の強さとして、『ワルファリン < インドメタシン』を示唆しています。