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O529

MALDI-TOF/TOF-MSによるペプチドのアミノ酸配列解析

MALDI法はESI法と並ぶ代表的なソフトイオン化法で、合成高分子や大型の生体分子(タンパク質、ペプチド、糖鎖)などの質量分析に広く用いられています。ペプチドの分析において、その分子量を測定するだけでなく、MS/MS測定を行うことでアミノ酸配列などの一次構造情報を得ることが可能です。MS/MSでは、高エネルギーの印加により側鎖の開裂が生じ、質量数が等しいロイシンとイソロイシンのような構造異性体を識別することが可能となります。また、タンパク・ペプチド解析ソフトを用いてプロダクトイオンスペクトルを処理することで、ライブラリ検索によりタンパクやペプチドの同定も行うことができます。

ここでは、血圧上昇作用をもつ生理活性ペプチドであるアンジオテンシンⅡ(およびそのロイシン改変体)のMALDI/MS/MS分析例について紹介します。

図1にアンジオテンシンⅡおよびロイシン改変体(アンジオテンシンⅡ中のイソロイシンをロイシンに変更した合成ペプチド)のプロダクトイオンスペクトルを示します。検出されたイオンの質量差から、各ペプチドのbイオン、aイオンおよびyイオン(図2)を確認することができました。

アンジオテンシンⅡ H2N-DRVYIHPF-OH
アンジオテンシンⅡ(ロイシン改変体) H2N-DRVYLHPF-OH
図1:アンジオテンシンII(上)およびロイシン改変体(下)のプロダクトイオンスペクトル

図1:アンジオテンシンⅡ(上)およびロイシン改変体(下)のプロダクトイオンスペクトル

図2:ペプチドの開裂様式

図2:ペプチドの開裂様式

図3にアンジオテンシンⅡおよびロイシン改変体のプロダクトイオンスペクトル拡大図を示します。それぞれのスペクトルにおいて、ロイシンおよびイソロイシンに特徴的なdイオン(図4)が検出されており、両者を識別することができました。

図3:アンジオテンシンIIおよびロイシン改変体のプロダクトイオンスペクトル(拡大)

図3:アンジオテンシンⅡおよびロイシン改変体のプロダクトイオンスペクトル(拡大)

  • イソロイシン
    イソロイシン
  • ロイシン
    ロイシン

図4:イソロイシンおよびロイシンのdイオン生成過程

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