HOME > 分析対象 > エレクトロニクス > リチウムイオン二次電池
L062

19F-NMRによるリチウムイオン電池の電解液中のFの定量分析

リチウムイオン電池の電解液劣化機構の1つとしてPF6の分解があり、それを見積もるためにFの定量分析が行われています。Fの定量分析としては、電解液を多量の水で希釈したあと、イオンクロマトグラフィー分析(IC)を行った事例が多く報告されています。しかしながら、この手法ではPF6の加水分解を完全には抑えることができません。また、フルオロエチレンカーボネート(FEC)などの添加剤は、水で希釈することで容易に分解してFを生成するため、このような添加剤を含む試料では適用できない場合があります。

これらの欠点を克服するために、弊社では19F-NMRの絶対検量線法によるFの定量分析も行っています。本手法では、前処理から測定までを大気フリー雰囲気(Ar雰囲気)で行い、また、水を一切使用しないため、PF6や添加剤の加水分解は起こりません。そのため、添加剤の種類に関わらず、多くの場合で電解液中のFの存在量を精度良く求められます。

ただし、19F-NMR法はIC法よりも感度が悪く、定量下限はIC法の10μg/g前後に対して200μg/g前後です(妨害物質等の分析阻害要因が無い場合)。そのため、水が存在してもFが発生しない試料についてはIC法を、FECなどを含む場合には19F-NMR法をお勧めしています。

図1:標準F−の19F-NMRスペクトル

図1:標準F19F-NMRスペクトル

図2:試薬LiPF6の19F-NMRスペクトル

図2:試薬LiPF619F-NMRスペクトル

前のページに戻るこのページのトップへ