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顕微ラマン分光分析によるお手軽・簡易・大気フリー測定
図1:ラマン測定の模式図
試料をなるべく大気に触れさせたくないが、酸素濃度や水分濃度などを厳密に管理する必要はない場合、つまり簡易的な大気フリー測定を行いたい場合、顕微ラマン分光分析が有用である。
グローブボックスで、サンプル瓶などの透明容器に試料を封入すれば、あとは通常測定と何ら変わりない手順で、試料のラマンスペクトルを得ることができる。試料をサンプル瓶ごと測定しても、サンプル瓶のラマンピークは検出されない。試料を取り出す必要が無いため、試料周辺は、グローブボックスの雰囲気を閉じ込めた状態になっている(図1)。ただし、当然のことながら、大気フリー対応の試料容器ほどの気密性は無い。
上記の測定系によって水分を遮断できることを視覚的に示すため、試料としてシリカゲルを用いて測定を行った。シリカゲルは、乾燥状態では青、吸湿状態ではピンク色になる。
アルゴン雰囲気のグローブボックス中で、青いシリカゲルをサンプル瓶に詰め、顕微ラマン分光装置を用いて測定を行った。その結果、シリカゲル由来のピークが問題なく検出された(図2)。さらに、サンプル瓶中のシリカゲルは、アルゴン雰囲気にあるため、測定後も青色を維持していたのに対して、測定の間、空気中に放置していたシリカゲルは、空気中の水分を吸収しピンク色に変化した(図3)。
このように、顕微ラマン分光分析を用いることで、簡易大気フリー状態で測定することができ、特に空気に触れて変化してしまうような試料に最適である。
図2:ラマンスペクトル測定結果
図3:試料の概観